WEBマガジン 漁師に会いたい Vol.5 西善丸 船員 落合啓太さん・志穂さん夫妻

Vol. 52017.01.06 UP

西善丸 船員落合啓太さん・志穂さん夫妻

それぞれ、神戸と島根県雲南市に生まれ育った。
出逢って即、意気投合。「啓太さんが出漁中は寂しいですがそこは割り切らないと」とは志穂さん。啓太さんは「本当は僕の方が寂しいかも(笑)」
「志穂ちゃんは船長以下同僚の船員から船舶関係者全員に可愛がられていますよ」と和田支所長。

Vol.5 西善丸 船員 落合啓太さん・志穂さん夫妻

漁師を支える奥様にスポットを・・・・

 今回は、過去4回と趣向を変え、現場の漁師を支える家族、中でも最も当人たちが頼りにしている奥様にスポットを当ててみたいと思います。
 柴山支所の和田支所長は、底曳網漁を終え、帰港してきた漁師の方々と沖での漁の様子からプライベートに至るまでいろんな話をしている中で、当支所所属沖合底曳網漁船「西善(さいぜん)丸(まる)」(125トン)の船員、今回の準主役(?)、落合啓太さん(39)との対話で「啓太みたいな“イケメン”に彼女が居ないのは何故なん?(女性と)出逢えるきっかけがなかなかないよね」なんて帰港するたびに話題はそのことでした。すると数年前に「和田さん、僕にもやっと彼女が出来ましたよ」と嬉しそうに、少しはにかみながら報告してくれました。早速、「(彼女の)写真見せて」とせがむと恥ずかしそうにスマホに添付しているショットを見せてくれ、写っていたのが今の奥様である志穂さん(31)です。

落合啓太さん夫妻
左より啓太さん、西村和弘機関長、西村佳典船長
左より啓太さん、西村和弘機関長、西村佳典船長

日本海が結びつけた二人

 啓太さんの出身地は神戸で、志穂さんは島根県出身です。二人とも但馬には所縁(ゆかり)はありません。いわば、『日本海が結びつけた二人』かなと和田支所長は笑う。先ずは二人のプロフィールから紹介したいと思います。
 啓太さんは、地元中学を卒業後、親元を離れ香住高校(漁業科)へ入学、当時の下宿先であった西村和弘(たかひろ)さん(今の同船機関長)の父親が船主の西善丸へ乗船。以来、二十年以上に亘り日本海の荒波と闘ってきました。
 一方、志穂さんは今の島根県雲南市で生まれ、本人曰く「おばあちゃん子」で育ちました。社会人生活は神戸で美容師と女性専用エステティシャンとして活躍していたところ、年末に帰省中の啓太さんと三宮のとある店で偶然隣り合わせになり、その場で意気投合。初めてのデートは数日後の西宮神社への初詣だったとのことです。啓太さんはタイミングを見計らい志穂さんの「おばあちゃん」に挨拶(勿論ご両親にも)に行き、昨年夏に籍を入れました。

柴山港停泊中の西善丸

結婚前から浜揚げを手伝う

 現在は豊岡市に一緒に住んでいますが、結婚前から志穂さんは好きだった仕事を辞め、西善丸が帰港するたびに浜揚げを手伝うようになりました。和田支所長はその姿を初めて見た時はビックリしたと言います。屈強な男の人でも敬遠する重労働をいわゆる『今時の娘(こ)』が朝早くから“出勤”していたからです。冬のカニ時期になると午前零時頃には浜に出て、真冬の時は積雪は珍しくなく、その時には自宅から浜まで小一時間はかかってしまいます。氷点下の中、横殴りの猛吹雪の時もあります。作業中にはあまりの冷たさに足のつま先はもちろん、手先の感覚は手袋をしていても無くなってしまうといいます。「最初は慣れるまで大変でしたけど辛いと思ったことはないですよ」とサラリと微笑みながら言う志穂さんの隣に居る啓太さんは嬉しそうです。

左)浜揚げ作業中の志穂さん。寒くて顔が半分しか出せません
右)柴山がにの象徴“ピンクのタグ”の装着

自分の娘みたいなもの

 船主の西村護さん、船長の佳典さん親子も浜揚げ作業は非常に激務であることから長くは続かないだろうと思っていたそうですが、なんと今日まで皆勤ですよと両者感心しきりです。護さんの奥様の美津子さんは「もう私たちの娘のようです。すごい頑張り屋さんで本当に助かっています。可愛くて仕方ありません」と喜色満面。

浜揚げ休憩中、おじさんたちに囲まれてます

君ありてこそ

 志穂さんは「日本一厳しい選別といわれる“柴山がに”のランク分けを一日も早く覚えて今よりももっと戦力になれるよう船が帰港するたび勉強しています」と話す目は真剣です。そんな志穂さんに感謝している啓太さんは「彼女と出逢ってからは仕事に対するモチベーションはかなり上がりましたし、何より丘で僕の帰りを待ってくれる存在が居るというのは幸せ者だと思っています(笑)」
 志穂さんは「私は何もしていませんよ。ただ日本海、特に冬は非常に波も荒いので、出漁中は安全第一で仕事をしてほしいです。『綾も錦も君ありてこそ』です」

出港時、ご主人の啓太さんを見送る志穂さん
(編集後記)今回、スピンオフとして企画した「奥様編」として、落合志穂さんには強引にご登場願い、大変ご無理を申し上げました。また、ご主人である啓太さんにも大変お世話になりました。ありがとうございました。

(空撮写真提供)株式会社松井マリン