WEBマガジン 漁師に会いたい Vol.7 松正丸 船長 浜松章さん

Vol. 72017.06.29 UP

松正丸 船長浜松 章さん

現在55歳 父親の後を継ぎ、船長になる。

趣味はツーリングで、先日は美保関までツーリングを楽しんできたという。、孫の子守りも趣味の一つだと話す顔は優しい笑顔で印象的

「好きな魚は?」と尋ねると、「魚は何でも好きだから困るなぁ」と言いつつも、中でも特にスズキやイカが好きというほど魚が大好きな船長です。

Vol.7 松正丸 船長 浜松章さん

朝の静寂な港に集う漁師たち

早朝5時前、朝の静寂につつまれた竹野港に漁師たちが集まってきました。

みなさんは竹野漁港で定置網漁を営む松正丸の船員さんたちで、朝の挨拶だけを交わすと、せっせと船出にむけた準備をはじめます。

出港の準備が終わろうしたとき、舵をとろうと席につく一人の漁師、この方こそ今回の主人公、浜松 章 船長です。

 

日に焼けた顔で日本海を見つめるその横顔は生粋の漁師そのもの。それもそのはず、今年で漁師歴35年目を迎えるというベテラン中のベテラン漁師。

松正丸は定置網漁という漁法で漁を行っている。定置網漁は魚の通り道を網でさえぎり、魚群を囲い網に誘い込む方法で、漁は一年を通して行うため、「季節の移り変わりは獲れた魚で感じられる。」と浜松さんはおっしゃいます。

 

 

 

 

 

港を出で、猫崎半島に向かうところで、水平線から朝日が昇ってきました。すばらしい朝日を見がら船は猫崎半島を越え、魚場に向かいます。

 

 

初夏では、イサキやサワラやアジ、シロイカ(ケンサキイカ)が旬を迎えており、今日は何が揚がるかとわくわくしているうちに船は漁場に到着しました。

出港の準備
水平線から昇る朝日
猫崎半島を越えて漁場へ
漁場に到着

魚の鮮度を保つために大切なこと

漁場に船が到着すると早速、網を巻き上げる準備をします。

さて何が入っているのか?

網の中には大小たくさんの魚が入っています。

 

 

まず初めに獲るのがシロイカで、イカは大変デリケートな魚。漁師たちはシロイカを丁寧にタモですくい取り一目散に船の生け簀にいれていきます。

 

 

年々、シロイカの需要が高まってきていて、特に、生きたままのイカを姿づくりにする「活イカ」は今では但馬の夏の風物詩の一つだと船長は話します。

 

需要が高まるにつれ、同時にイカの鮮度の高さも要求され、これに応えるために浜松さんは、イカの扱い方に細心の気を配る。

 

丁寧に、でも迅速に生け簀に放り込まなければならないシロイカはなかなかのくせ者ですよ!とベテラン漁師が語ります。

 

 

 

 

鮮度にこだわるのはなにもシロイカだけではなく、他の魚にも気を配る。

浜松さんは漁の最中に何度も「水槽に氷を足せ!」と叫んでいました。

気温が高くなる時期は魚の鮮度が落ちやすいので、氷の補充には気を使うと話されます。「魚を獲ったはいいが、その鮮度が悪かったら元も子もない」と話す浜松さん。

網揚げの様子
魚入っているかな?
大漁!
船長がイカを選別しています
鮮度の良い白いか

船上でとれたての魚を活〆する

獲れた魚の鮮度を保つことは第一です。そのために魚を活〆するそうです。

 

 

船にあがったツバスやマダイ、スズキのエラ蓋に包丁を入れ、血を抜く。その光景は痛々しいが、魚の鮮度を保つための最善の方法ですよと言います。

 

 

これ以外にも「神経抜き」という方法も取り入れている。「神経抜き」とは、魚の尾の部分から針金を入れ、神経を抜く手法で、見ていて目を覆いたくなるような光景ですが、鮮度維持には欠かせないといいます。こうした一手間がのちに大きな差となって表れてくると船長は話します。

 

 

 

定置網漁は潮の流れに左右され、魚の水揚げ量を意図的に増やすことはなかなか難しい。だからこそ、魚価を上げたい。その為には鮮度の高さが鍵になるのだという。

活〆する魚
真鯛を活〆
大物は活〆
氷水の中へ

海での戦いが終わると
次は陸での戦いが待っている

海での操業が終わり、船は竹野港に帰ってくるとこれからが漁師にとっては本当の戦いが始まります。

獲ってきた魚を種類別・サイズ別に分ける。ベルトコンベアのような巨大な機械が魚を運び、大まかなサイズに振り分ける。この機械は瀬戸内海の業者から購入したもので、使用して10年以上になりますが、いまでもバリバリの現役で活躍しているらしいです。

機械によって選別された魚をさらに細かく選別するのは、やっぱり人の手。

漁師さんやその家族の方が総出となって選別作業に懸命に励んでおられました。それもそのはずで、朝セリの時間が決まっているので、漁師さんたちも必死。その姿は一種の戦いを見ているようです。

選別していると、その横手で仲買人や卸業者の人たちが、今日は何が水揚げされたかと興味津々。これも無言のプレッシャーとなり、漁師さんたちをさらに急き立てるように見えました。大急ぎで選別・箱詰めを終え、セリ開始の時間となります。

海と陸の両方の戦いを終え、ようやく漁師さんたちは海を眺めながら一息つけるのです。

水揚げされるたくさんの魚

人の手での選別作業
大変な作業中も笑顔がこぼれる

やはり、後継者については気がかり

この「漁師に会いたい」シリーズでも何度かお伺いしましたが、現在の日本における水産業界の問題の一つに後継者不足があります。この点について浜松船長に率直に聞いてみました。すると、「はっきり言って、何も考えていない。だめなことだとは分かっているけど、日常の仕事に追われて、ついつい後回しにしてしまっている」といいます。ただ、浜松さん自身はあと10年は漁師を続けると断言されました。その中で、今後の後継者のことは考えていくと話します。

まだまだ現役としてやっていきたいと思っている浜松さんの姿に憧れ、後継者となる人が現れるかも知れません。事実、優しく的確に指導する浜松さんに、他の漁師さんは信頼を置いているといいます。

これからも浜松船長の乗った松正丸は、竹野をそして但馬の海を存分に盛り上げてくださることでしょう。

浜揚げ作業中の船長